教育産業を席巻するインターネットとデジタル教材

 事業所にいると、頻繁に営業電話がかかってきます。15年程前は、コピー機の販売やチラシの制作でしたが、現在は、インターネットの口コミ代行業者やSEO対策業者、映像教材やAI教材などのデジタル教材の販売会社からの営業です。
「ネットの口コミだけで、生徒が集まるようになる。」とか、「人件費がかからず、放っておいても、子供たちは画面に集中して勝手に勉強するようになる。」などと勧誘を受け、「そのようなことには興味がない。」と食わず嫌い宣言をしていましたが、「はっきり言ってあなたは時代遅れ。3年以内に絶対潰れる。」などと言われてからは、「もう何年も、取引させていただいている業者さんがあって、充分満足しています。」などと満腹宣言をしたり、「もう席が満席で、これ以上集まると困ります。」などと見栄を張った満席宣言で相手にあきらめてもらうようにしています。嘘も方便です。申し訳ございません。

 インターネットに関しては、昨年に、学習塾比較サイトによる、当塾への虚偽の事業内容や、明らかにAIなどによる偽口コミが掲載されたことをきっかけに、ホームページの制作にいたりました。口コミ代行業者やSEO対策の業者には頼らず、身の丈にあった真実の情報を発信していきたいと思っています。

 デジタル教材に関しては、私自身完全に無視しているわけではありません。2021年4月~2022年3月まで、コロナでの休校期間に、塾での通常の授業の他に、映像教材で家庭学習をして、授業中に確認テストを実施する形式で導入しましたが、生徒たち(特に成績上位の生徒)から、「普段の黒板を使った授業のほうが頭に残る。」と言われ1年で終了しました。デジタルを一部取り入れたアナログ中心の授業を、模索することもありますが、デジタル教材を使用した勉強は本質的に小中学生には馴染まないというのが、今の私の見解です。
 現在、人材不足対策や個別カリキュラム作成に最適と、塾業界でも映像教材やAI教材が広まりつつありますが、帯広市の中学校で2022年度に導入した業界最大手の映像教材も、生徒たちが学習効果を感じられないまま、1年で使用が終わってしまったように、大多数の小中学生に支持されながら学習効果も上げているデジタル教材は、現在は皆無と言えます。
 学校の授業を受けるのが困難な状況にある生徒のためや、興味や関心がある生徒が予習などをするために、補助教材的に、映像授業を誰でも受けることができる体制や、基礎の反復練習のためにゲーム感覚のデジタルコンテンツがあってもいいと思いますが、テレビ番組などで知識人が言うように「全国の生徒が林修先生のような、上手な授業を動画で受けて、学校の先生は勉強のサポートをすればいい。」という発想には反対です。効率的で合理的なようですが、子供たちが何かを有機的に理解するには、双方向の心理的コミュニケーションやゆらぎが必要で、その場での、適度な緊張感やワクワク感、理解を避けたくなる生徒と伝えたい教師との葛藤、学びの場面での空気、間…といったものが重要で、「頭に残る」感覚をつくる重要な要素だと思います。時には、理解できなかったという感覚も学びだと思います。
 デジタル教材を制作した企業や、導入した学習塾などは、投資した費用の回収のために、効果を高らかに宣伝していますが、眉唾物として受け止めてください。

上部へスクロール