塾と焼肉

「塾と教育」という季刊誌があります。特に申し込みはしておりませんが、無料で送られてくるので、一通り目を通していますが、映像教材やICT教材、生徒管理システム、フランチャイズの紹介が中心で、広告じみた記事が多く、かなり盛られたストーリーが大半となっています。
 先日、その雑誌の表紙を眺めていたら表題がふと頭に浮かびました。当塾では、中学3年生の講習会にて、皆で目標を達成したら焼肉をごちそうするという企画を行っています。小テスト満点や課題達成などにポイントを与え、10万ポイント超えたら焼肉パーティーの実施です。自分の努力がポイントに反映されるため、「皆が楽しみにしている焼肉のために自分も頑張らなきゃ。」と受験生たちは必死になり、この企画がなければ、ここまで頑張れなかったと本人や保護者、そして私も感じる生徒が多数います。中3の講習会は内容が濃いため、現実には、講習期間だけでは終わらなく、夏期講習会の課題も、早い生徒は4月から取り組み始めます。勢いづくと講習会前に、全ての課題が終わり、追加の教材に邁進し、驚くような学習効果を上げるような生徒もいます。一方、学習内容と連帯責任に尻込みし、たまに退塾してしまう生徒が出てしまう側面もあり、塾側の労力や人件費増大に追い打ちをかける売上減など…マイナス面もありますが、学習効果の高さや、やり切った生徒の達成感、向き合うのか向き合わないのかの葛藤など…圧倒的にプラス面が大きく、15年以上続けています。
 以前の中学1年生で、塾の勉強に真剣に取り組めない生徒が多かった年度があり、「肉をごちそうしたら、勉強も頑張るかも。」と考え、ただ楽しむための焼肉パーティーを全学年で開催したことがありました。勉強は嫌いだが、焼肉は大好きな中学1年生がおおいに盛り上がり、親子に感謝されましたが、夏休み以降、勉強嫌いの中学1年生たちは結託し、気持ちが大きくなったのか、女性や大学生講師の授業への妨害をするようになりました。厳しい態度を示したところ、結局7名の生徒が退塾していきました。「努力なき報酬は悪」と痛感しました。
 「塾と教育」に戻ります。唯一楽しみにしている「民間教育学原論」という連載があり、宣伝色がなく読み応えがあります。8月号では、「誰かのために」という表題で、頑張ろうという気もちの源泉に「自分のために」という意識と、「誰かのために」という意識があり、たいていの場合は共存しているが、「誰かのために」のほうが踏ん張りどころの礎となる内容でした。同感です。
 周囲から慕われている15歳前後の生徒は、学力が大幅に伸びていくことが多く、自己肯定感が強まって努力できるのだろうと思っていましたが、そもそも「誰かのために」の気持ちが強いために、努力ができるし周囲も安心してそばにいられるのでしょう。

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