予熱と余熱:学力向上に不可欠な「思考の熱」

 長期休みに入り、当塾ではじっくりと問題に向き合う学習が中心となります。これは将来の高校入試を見据え、読解力や思考力が求められる難易度の高い問題にも対応できる力を養うためです。

 生徒たちには、全ての問題が正答できるまで徹底的に取り組むことを求めています。もちろん、一人で考えても解答にたどり着けない時は、遠慮なく講師に質問し、解決の糸口を見つけてもらいます。

 しかし、ここで大切なのは、「身につく学び」と「そうでない学び」を分けるものです。それは、質問するまでにどれだけ自分の頭で深く考え、熱量を注いだか。そして、教えられた後に、その解法プロセスを自分の脳に刻み込むように確認し、さらに思考を巡らせたかにかかっています。この**「思考の熱」**は、教える側から見ると、はっきりとその様子が分かります。

 これはまるで、肉焼きの極意に似ています。いかに柔らかく、肉汁を逃さず火を入れるか。その鍵は、事前に肉を常温に近づける**「予熱」、つまり焼き始める前の準備とイメージ**。そして、火を止めた後、数分間寝かせる**「余熱」、つまり火から離れてもなお、じっくりと熱が内部に伝わる時間**にあります。

 冷たいまま焼けば、外は焦げても中は生焼けに。その状態から無理に火を通せば、パサパサになってしまいます。また、焼きあがってすぐに切ってしまっては、せっかくの肉汁が逃げてしまいますよね。

 これはまさに、その場しのぎの一夜漬け学習と同じです。表面的な知識は得られても、その単元から本当に学ぶべき知識や考え方は身につきません。肉全体に旨味がじっくりと行き渡る「余熱」のように、知識や思考を深く定着させる時間が必要なのです。

 学力が伸びていく生徒は、新しい知識や考え方、そして解き方のプロセスが、まるで細胞に染み渡るかのように、着実に自分のものにしていきます。そうなれば、思考力が重視される初めての問題にも、自信を持って対応できるようになるでしょう。ただ基本問題を繰り返したり、答えだけを丸暗記したりするだけでは、決して到達できない境地です。

追伸:ちなみに私は、肉を焼いた際に、「このタイミングで食べなさい。」とか言うおせっかいなおじさんです。

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