ゴールデンウィークは、娘が小さい頃から親しくさせていただいているご家族と一緒に、真狩村のコテージで楽しい時間を過ごしました。幸いお天気にも恵まれ、美しい羊蹄山を眺めながらリフレッシュできました。
滞在中、母の日も近いということで、母二人にはマッカリーナでのランチを楽しんでもらいました。ミシュラン三ツ星レストラン「モリエール」と同系列のお店です。後で感想を聞くと、メインのサクラマスや牛ランプ肉もさることながら、「雪下にんじんのソテーに最も感動した!」とのこと。素材の味を最大限に引き出す、シェフの卓越した技術が光る一品だったようです。以前、家族で訪れた際も、ジャガイモを薪ストーブの灰でじっくりと火を通したシンプルな料理に圧倒されたことを思い出しました。まさに「料理は科学、そして絶妙な塩梅(あんばい)が肝心」ですね。北海道の風土を活用した雪下にんじんと、それを活かすシェフの技が出会ったとき、最高の感動が生まれるのでしょう(残念ながら私は味わえませんでしたが…!)。この感動が、我が家の今後の食卓にも還元されることを期待しています。地元産の美味しい野菜を、より豊かに味わいたいものです。
さて、素材の良さを引き出すには、料理人なりの「型」や「哲学」が不可欠だと感じます。それが確立されていれば、期待を裏切らない一皿が生まれます。では、その絶妙な味付けや火加減は、どのようにして決まるのでしょうか。
以前、私がラーメン店を営んでいた頃、十勝で人気の和風パスタ店を経営されているご夫婦が、時折お店に足を運んでくださいました。そのお店は製造販売するドレッシングも評判で、ある時、お店でしか提供していない特製みそドレッシングをお土産にいただいたことがあります(スモークチキンサラダにかけて、大変美味しくいただきました)。その折に伺ったレシピ開発のお話が印象的でした。新しいレシピを考案する際、ある瞬間に必要な調味料や素材の分量が頭の中に鮮明に浮かび、それが不思議なほどピタッとはまるのだそうです。
これは単なる「ひらめき」や偶然の産物のように聞こえるかもしれません。しかし、それは長年培ってきた基本レシピへの深い理解と実践、そして日々の調理において、香り、色、音、食感など五感を研ぎ澄ませた観察、素材や調味料の特性、調理法の効果に対する飽くなき探求心があってこそ、そうした経験と知識が脳内で複雑なネットワークを形成し、ある瞬間に「これだ!」という独自のレシピとして結実するのだと思います。何も考えずに漫然と作業をこなしているだけでは、決して訪れない瞬間でしょう。
これは、学習にも通じるものがあります。「主体的に考える」「主体的に生きる」という言葉が教育の大きなテーマとなっていますが、料理に例えるなら、まさに「自分なりのレシピを考え、編み出す力」と言えるのではないでしょうか。基礎をしっかりと身につけた上で、自分なりに工夫し、試行錯誤を繰り返してたどり着いた「自分だけの解法」は、応用力やさらなる探求心へと繋がっていきます。そう考えると、「考える力を育む料理教室」なども、子どもたちの主体性を養う素晴らしい習い事になるかもしれませんね。
話は戻りますが、父二人と子どもたち三人は、美味しいソフトクリームを求めて牧場や道の駅へドライブ。その途中、ただならぬ雰囲気の蕎麦屋さんを発見しました。子どもたちを説得して入店しようとしたところ、なんと1時間半以上の待ち時間、しかも残りはもりそば3人前のみという状況。しかし、待つ間も道の駅を巡るなどして時間を有効活用し、無事お蕎麦にありつくことができました。後で調べてみると、そのお店は食べログの北海道蕎麦部門で最高評価を得ている名店でした。おそらく普段は賄いなどで食されているような蕎麦の端の部分も使いながら、3人前の料金で5人分に分けて出してくださるなど、温かいご配慮もいただき、大変美味しくいただきました。手打ち蕎麦は店ごとに個性がありますが、このお店の蕎麦には深く感動しました。同時に、普段地元でいただくお店を出していない方の手打ち蕎麦やお店で食べる新蕎麦も、決して負けない美味しさであることに気づき、なんだか誇らしい気持ちにもなりました。これもまた、比較対象があって初めてわかる「価値」であり、探求心の賜物かもしれません。 日々の生活の中には、このように「主体的に学ぶ」ためのヒントがたくさん隠されています。当たり前と思えることにも「なぜだろう?」「どうすればもっと良くなるだろう?」と疑問を持ち、自分なりに考えてみること。その小さな積み重ねが、やがて大きな力となるはずです。